第2回 いのち輝くマグネット

第2回 いのち輝くマグネット

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黒岩知事はご就任当初から「いのち輝くマグネット神奈川」というテーマをメッセージ、政策として掲げていらっしゃいますが、どんな意味を込められたのでしょうか。

 私は報道に携わっている頃から「いのち」と平仮名で表現することにこだわってきました。医療という分野は人のいのちを輝かせるためのものですが、医療だけが充実しても、環境、食、農業といった分野が充実しないことにはいのちは輝きません。経済活動もいのちを輝かせるためにあるものですし、「生きるとはどういうことなのか」といった哲学の問題にも繋がっていきます。国は安全保障の分野で国民のいのちを守っていますし、ありとあらゆる活動がいのちに関わる、根本的なものなのです。ところが、我々はいのちに関わる分野を役所の区分で考え、この区分で考えることが癖になってしまっているのではないでしょうか。医療、食、住まい、街のかたちといった、いのちに関わる事柄を役所の区分で考えるのではなく、総合的に考えていきたいということから「いのち輝く」というテーマを作りました。
 「マグネット神奈川」というのはマグネットホスピタルがヒントになっています。看護師が入職したいと続々と集まってくる病院はマグネットホスピタルと呼ばれています。神奈川県も人々を惹き付け、「神奈川県で働きたい、神奈川県に住みたい」と思われる県にしたいという願いから、「マグネット神奈川」と付けました。

神奈川県では「医療のグランドデザイン策定プロジェクトチーム」を作られ、ミーティングを始められていますが、どのようなテーマで進められているのですか。

 都道府県単位で医療のグランドデザインを策定するのは全国初の試みです。医療の世界は日本全国で同じ基準が作られ、厚生労働省による中央集権になっています。それにはプラスの面もありますが、地域には地域ならではの特性がありますので、地域独自の医療のあり方を考えていきたいというのがきっかけです。大学医学部の先生、県立病院の医師、開業医の先生、歯科医師の先生、看護協会の方、薬剤師会の方、福祉関係者、総合政策の研究者など、幅広い分野の専門家にお集まりいただきましたが、私からは「制度や法律を度外視して、常識を外して考えてくれ」と言ってあります。医療全般がテーマですので、非常に広い範囲を扱っているのですが、現在、ものすごい勢いでまとめられているところです。

 私は以前、政府の規制制度改革分科会のメンバーであり、その中のライフイノベーションワーキンググループにも所属していました。そこで、「開かれた医療」、「地域主権の医療」について提言してきたのです。当時の菅総理のキーワードは「開かれた」ということでしたし、民主党が訴えてきたことは「地域主権」でしたから、これらをまさに医療にあてはめようとするものでした。ところが、「開かれた医療」については、日本は全く開かれていません。国民皆保険制度は機能していますが、それだけでいいのでしょうか。海外とはドラッグラグ、デバイスラグと呼ばれる差が生じています。メディカルツーリズムの分野も立ち遅れています。「日本人でさえ救急でたらい回しになっているのに、外国人までが患者になったら、どうするんだ」という声もありますが、そのためにも外国人医師、外国人看護師を受け入れていくべきなのです。国内に対しては情報を透明化し、ICTを活用した診療情報の共有などが必要でしょう。「開かれた」というのはこのように「内外に」開かれたということを意味しています。
 「地域主権」については地域の人口動態などの実情に合わせた改革を行おうというものでしたが、当時の蓮舫大臣が仕分けの土俵にも載せませんでした。それで、国がやらないのであれば、神奈川でやろうと思ったのです。
 医師不足、看護師不足についても、しっかり議論していきますし、東西の融合した医療についても考えていきます。そういったビジョンを描く中で、「医食農同源」の考え方を深めていきたいと願っています。

2011年5月に、神奈川県看護賞の贈呈式がありました。この賞はどういうものなのでしょうか。

 今回で46回目を迎えた、伝統ある賞です。これまでに受賞された方は480人に上ります。神奈川県の看護の世界で一生懸命、頑張ってこられた方を表彰しています。今回の受賞者は保健師2人、助産師1人、看護師7人となっています。この表彰は受賞された方々が「報われたな」と思ってくださるだけでなく、看護の世界で頑張って働いておられる方々のモチベーションをさらに向上させる意義があると思っています。