私達ナースです(看護師の声)

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Vol.24  看護師だからできる院内ADR(後編) 市立豊中病院 医療安全管理室 水摩 明美室長

看護師だからできる院内ADR 後編
市立豊中病院 医療安全管理室 水摩明美室長

大阪府豊中市の市立豊中病院では2005年4月、医療の安全確保に組織的に取り組むための統括・調整部門として医療安全管理室を設置した。その初代室長として、また看護職のゼネラルセーフティーマネージャーとしてリーダーシップを惜しみなく発揮しているのが水摩明美室長である。医療安全管理室でのインシデントの集約、分析、フィードバックは全国の病院で行われているが、市立豊中病院ではそれらに加えた業務として院内メディエーションを用いた医療ADRを行っている。前編では、医療ADRとは何か、メディエーターとしての水摩室長の役割などについてお話を伺ってきた。続く後編では、メディエーションにおける合意と効果、市立豊中病院で取り組んでいる医療安全対策などを中心にお伝えする。

■プロフィール

島根県出身。1975年に国立大阪病院附属高等看護学院(現 大阪医療センター附属看護学校)を卒業する。その後、国立大阪病院(現 大阪医療センター)に勤務し、1978年に市立豊中病院に移り、ICU、手術室、外科病棟などに勤務する。1982年に仏教大学通信教育部に入学し、社会学部社会福祉学科を4年で卒業。1994年から豊中看護専門学校で教員としての経験を積み、この間の1999年に看護師長級となる。2000年に市立豊中病院に外来師長として戻る。2004年に集学治療病棟師長に就任し、外来化学療法センターの設立に伴い、がん患者のサポートチームを牽引する。2005年から医療安全管理室長に就任し、現在に至る。

● メディエーションの合意と効果

これまでの実績について、ご紹介ください。

 2005年から約2年間で、医療安全管理室が受けた医療に関する苦情、クレームは53件で、そのうちの26件でメディエーションを行いました。その結果、患者さんの状態や過誤の有無に関わらず、患者さん側が納得して感謝の言葉を述べてくださったものが17件、「納得するしか仕方ない」と言われたのが4件、納得できないと言われたのは5件でした。したがって8割が解決ということになります。全てを院内で解決できるとは考えていませんし、記録を裁判所に提出することもできるのですが、医療訴訟になった事例もありません。

医療者側の満足はいかがでしょうか?

 医療者は92.3%にあたる24件が納得していますので、紛争の解決方法としては効果があると評価できるでしょう。先日、医師から手紙をもらいました。「医師として普通にやってきたつもりでしたが、患者さんとの理解がずれていたことを目の当たりにして、今後の対応について考えるきっかけになりました」とあり、医療者の事故や医療に対する考え方にも効果的な影響を与えていると感じています。

最近では患者さん側のモラルも低下していると言われています。

 私どもは613床を有する地域の中核病院で、がん拠点病院にも指定されるなど、高度医療を行っていますが、医療にも限界があります。それを認められない患者さん側からの言語的な暴力や威嚇行為というものが残念ながらあります。医療崩壊を防ぐためにも医療者を病院として守らなくてはいけません。

メディエーションと看護の共通性はどういったものでしょう?

 私はメディエーションは看護の中の一つの理論だと思っています。看護師だからできる仕事なんですよ。看護師は医療のことが分かります。患者さんの顔色を見て、気持ちを読むこともできます。コミュニケーションスキルも非常に高いです。コンフリクトマネージメントでは事実を確認し、事実に基づかない抗争を排除します。そして相手の感情を読みながら、真のニーズを察知し、一番の争点を探るのです。人間対人間のコミュニケーションというところが最大の共通性でしょう。

● 医療安全

医療安全対策について、お聞かせください。

 「医療安全管理室News」を頻繁に発行し、全ての医師にはメールマガジンとして配信し、プリントアウトしたものを看護師の詰所に貼っています。また危険予知トレーニングを行い、「よし!」という指差し確認の徹底に努めています。医療安全週間には指差し呼称隊が院内をパトロールし、「PC、患者情報終了、よし!」など声を掛けています。
 また院内で劇をすることもあります。私はナレーターとして参加しています。管理職も「よーしっ!」と大きな声でやっていますよ(笑)。
 さらに模擬記者会見を行い、その模様をビデオにとって再生するなどのメディアトレーニングも行っています。

インシデントはどのぐらい発生するのですか?

 年間約2400件ですね。600床を超える病院ですから、そのぐらいの件数になるでしょう。インシデントは減ってしまってはダメなんです。医療安全管理マニュアルに基づいて報告されたリポートを医療安全管理室で集約し、RCAやメディカルシェーファーなどの分析を加えて院内にフィードバックし、再発の防止に努めています。他職種とのやりとりでは院内を走り回ることもありますよ。

看護師が医療事故の当事者となり、それが原因で職を離れることもあるそうですが…

 確かに転倒、転落予防をしていても限界があり、事故が起きています。そこから裁判になる、ならないはご家族への日頃の対応の仕方も問題なのですが、私どもでは転倒、転落の事故は事案ごとに振り返りをし、入眠剤の選択を検討するなどしています。このほどスリッパを廃止し、つま先つき転倒予防シューズを導入したことも一例です。
私どもでは「看護師を守ります」という姿勢を貫いています。そのために事故を起こさせないシステムを完備しているのです。プリセプター制度は全国の病院で設置していますが、私どもでは従来のプリセプターに加え、プリセプターよりも上級の看護師を「匠(たくみ)ナース」として配置し、厚いサポート体制をとっています。ラダーシステムを含めた、こういった教育体制を整えることが大切なのではないでしょうか。

医師へはどのような教育をされているのですか?

 「異状死体」の届出義務を規定した医師法21条について勉強会をしています。私どもは臨床研修指定病院で、毎年多くの初期研修医を迎えていますので、研修医には姿勢や言葉遣いを含めて特に丁寧に指導します。インシデントに関する判断は一人でせず、報告することを繰り返して話しています。医療安全は決してマイナスイメージがつきまとうものではありません。皆が安全活動に前向きな姿勢を示していくことが肝要なのです。

今後の取り組みについて、お聞かせください。

 最初は部屋もないところからスタートした医療安全管理室ですが、業務内容も多岐に渡り、セーフティーマネジネントである、「前」の医療安全と、コンフリクトマネジメントである、「後」のADRを一人でやっていくことに限界が出てきました。来年は兼任という形ではありますが、医師と薬剤師にもメンバーに入ってもらう予定です。マインドとスキルを持って、今後も取り組んでいきたいと思います。

● メッセージとプライベート

ご趣味について、お聞かせください。

 高校時代はバスケットボールをしていまして、とにかく身体を動かすことが好きですね。ママさんバレーボールも20年続けたんですよ。バレーしながら、地域の「看護師無料相談所」という雰囲気でしたけど(笑)。最近はジムにも通っていますし、冬にはスキーやスノーボードにも行きます。

若い看護師にアドバイスをお願いします。

 白衣を着たら、コミュニケーションのプロだということを自覚し、話し方から変えていかなくてはいけません。メディエーターのスキルも基本は看護師が習ってきたスキルなのです。紛争は一次対応が重要ですが、一次対応はもともと看護師が専門にしてきたことで、看護師で十分できることなのです。人間対人間のコミュニケーションを大切にしながら、本当の看護を追求して頂きたいですね。

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