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HOSPITAL INFO ナース版

第5回 兵庫医科大学病院

兵庫医科大学病院は1972年の開設以来、1044床を有し、医学教育機関としての高度医療を行う一方、阪神地区の基幹病院として地域に根差した医療も提 供している。阪神大震災やJR福知山線の事故の際には災害拠点病院として重責を担った。また救急救命センターは三次救急施設であり、38床の病床とドク ターズカーを有している。  看護部は常に患者さんに満足していただける看護の提供を目指し、「SWEET」の旗印のもとに業務に取り組む。多分野、多人数のスペシャリストナースの 存在をはじめ、新人教育、継続教育にユニークなシステムを導入し、質の向上に力を入れている。

今回は山田繁代副院長兼看護部長と山田明美看護部次長にお話を伺った。



◆山田 繁代 副院長兼看護部長 プロフィール
1967年に大阪大学医学部附属看護学校を卒業し、大阪大学医学部附属病院に勤務する。1974年から兵庫医科大学病院に勤務し、1995年に看護部長に就任する。2004年に療養環境担当の副院長を兼任する。2007年からは兵庫医科大学附属看護学校長も兼任している。
◆山田 明美 看護部次長 プロフィール
1975年に金沢大学医療技術短期大学を卒業後、兵庫医科大学病院に勤務する。1993年に看護部教育担当師長、1995年に教育担当部次長に就任する。また1998年に武庫川女子大学大学院で臨床教育学の修士課程を修了する。


WE SET SWEET

山田次長:当院の看護部がめざすキャッチフレーズを募集したところ、英語の得意なスタッフの一人がこの「SWEET」を提案してくれました。SWEETというと甘いというイメージがありますが、心地よいという意味もあるんです。コピーに惹かれて入職を決めた看護師もいるほどです。

山田副院長:私どもの病院のみならず、看護の基本の全てがこの「SWEET」に集約されていますね。さらに冒頭に「WE SET」をつけて、「私たちは目指します」というニュアンスも出しました。この「WE SET」も「SWEET」の文字の並び替えなんですよ。




スペシャリスト

兵庫医科大学病院には3人の専門看護師、5人の認定看護師が在籍している。専門看護師は慢性疾患看護、急性・重症疾患看護、がん看護、認定看護師は感染管理、皮膚・排泄ケア、救急看護、不妊症看護と幅広い分野で活躍している。

山田副院長:特定機能病院として医療の高度化・複雑化に対応できる看護師を育ていかないといけないと考え、スペシャリストナースを目指す看護師の処遇の一つとして、長期出張や休職制度などを設け、サポートを行っています。

山田次長:現在は小児救急、救急看護、ホスピスケア、重症集中などのコースを受講中です。スペシャリストナースの活躍の現場を見たいと北海道からも実習生が来られています。

山田副院長:従来、看護師は看護部という組織の中で仕事をしていましたが、スペシャリストナースたちは看護部という組織を越えて、それぞれのスキルを生かせる部署に配属 しています。例えば慢性疾患看護専門看護師は地域医療・総合相談センターに所属しています。在院日数短縮を受けて、退院調整は喫緊の課題なのですが、保健師とともに在宅看護の相談に乗っています。生まれてからずっと人工呼吸器をつけている患者さんなど医療依存度の高い患者さんに退院して頂いた例も3例を数え、ご家族のQOLも向上させています。

山田次長:感染管理認定看護師も所属は感染制御部です。医師や他職種と対等に働くというのは看護業界にとってもプラスですね。これまで看護師はキャリアを重ねると、管理や教育という道しかなかったわけですが、この制度は看護師のキャリア開発も多様化させたと思います。

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チーム医療

兵庫医科大学病院では、NST(栄養管理)、ICT(感染管理)、褥創、呼吸ケア、緩和ケアなどのチームを組織し、看護師がそれぞれのチームで核として活躍している。また師長クラスのリンクナースを配備し、看護師にしかできない臨床的所見からのアセスメントを行う。これが早期発見となり、チームでのラウンドやコンサルテーションを意味あるものにしている。

山田副院長:医療の高度化、複雑化に伴い、医療は医師だけでは成り立ちません。24時間患者さんの生活管理を含めたケアを行っている看護師が重要な役割を果たしています。なかでも、スペシャリストナースがチームの一員として組織横断的にかかわり、医療の質向上に貢献しています。




サテライト薬局

チーム医療を徹底させるためには看護師はベッドサイドケアに集中する方が効果的である。このため兵庫医科大学病院では病棟の一角にサテライト薬局を設け、その日にオーダーされた点滴などの注入、ミキシングを薬剤師が行っている。サテライト薬局は現在3か所あり、まもなく1か所増える予定である。

山田副院長:何でも看護師が行うという時代ではありませんからね。また私どもでは臨床工学技士も10名ほどが在籍し、当直する体制もとっています。透析にも技士を常時1名配属するなど、医療機器安全にも傾注しています。




ジェネラリストバッジ

兵庫医科大学病院ではクリニカルラダーシステムを導入している。レベル㈵(新人)、レベル㈼(一人前)、レベル㈽(中堅)、レベル㈿(達人)の段階に分け、臨床実践能力を確実に向上させながら、適切な評価を行うというものだ。レベル㈿に到達すると、ジェネラリストと認定され、バッジの交付を受ける。このバッジを着けている看護師は738人中、まだ2人であるという。

山田次長:高齢社会となり、一人の患者さんが一つの病気だけを抱えているというわけにはいかなくなりました。いろんな病気を持った患者さんに対する看護はやはりジェネラリストでないといけません。バッジはデザイナーに依頼して特別に作ったんですよ。このバッジを着けることで、自覚を持ち、このバッジにふさわしい行動をとってほしいと思っています。ジェネラリストの育成にもスペシャリストナースが活躍しています。例えば、専門看護師には教育を含む6つの役割があります。その役割を果たすために、スペシャリストナースが院内教育計画の参画することで、ジェネラリストを誕生させる素地になっていますね。

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生涯学習認定システム

生涯学習の観点から、看護師になってから学ぶ学習や研修会参加、社会活動、お稽古事などを全て単位認定している。履修科目は「専門知識・技術」、「教育・指導」、「一般教養」などの8科目に分類され、例えば「看護診断を取り入れた看護過程」研修会参加で2単位、プリセプター研修会参加で1単位、「医療と生命倫理」研修会参加で0.25単位、1年間のお茶のお稽古3単位などとなっている。

山田次長:ジェネラリストとして成長していく過程で頑張りを認めてあげようと、単位をつけていくことになりました。お茶などのお稽古事はこちらで把握できませんから、自己申告です。最近は皆が積極的に申請していますよ。60単位を取得すれば、看護部長から表彰状が手渡されます。

山田副院長:看護師の自己の成長につながるものでもあり、「一年間の履修表」は各自のファイルを作成し入力できるようシステム化したのですが、自分の履修状況が把握でき、学習の良い動機づけになっているようですね。

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医療安全・人材確保・福利厚生

医療安全管理室にも専任の看護師が配属され、専任薬剤師とともに室長の医師を支えている。1044床もの大病院だけに、年間のインシデントも約2000例を数えるという。そのうち35%が薬剤や処方に関する事例であり、転倒、ドレーン管理の問題などが続く。インシデントは即座に入力され、現場にフィードバックされる。医療安全委員会の下部組織として各診療科、各病棟のセーフティーマネージャーで構成される連絡会があり、2か月に1回のミーティングを行っている。

山田副院長:日頃は専任の二人がラウンドしています。他院の事故なども振り返りを行い、何かあれば直ちに全部署にメールで送信するなど、防止に努めています。インシデントではなく、アクシデントになってしまった場合は事故か過誤かを見極めないといけません。事故対応部会を開催してタイムリーに対応します。

2001年に近隣の看護学校を大学附属にし、人材の確保に道を開いたが、2007年には神戸市のポートアイランドに姉妹校として兵庫医療大学を開設した。ここには看護、リハビリ、薬学の3学部を設置し、兵庫医科大学の学生とともに兵庫医科大学病院でECE(早期臨床体験学習)を行っている。

山田副院長:兵庫医療大学はチーム医療を推進、ボーダーレスというコンセプトで実習も行っています。ECEは全国的にも珍しいプログラムのようですね。ECEでは看護師について、患者さんの一日の行動を学びます。これで医療者としてのあるべき姿を認識させられますので、発表会でも良い意見が出て、動機付けとしては有効のようです。

兵庫医科大学病院では近隣にワンルームマンションを5か所、330室を確保しているなど、手厚い福利厚生を誇っている。ワンルームマンションは全て西宮市内の閑静な場所にあり、希望者全員が入居可能である。

山田副院長:地方出身の看護師も多いですね。マンションはどれも近くにありますので、夜勤のときも安心です。皆、自転車で通っていますよ。私どもは阪神電鉄の武庫川駅から歩いてすぐの場所ですし、大阪にも神戸にも出やすいです。甲子園球場もすぐそばなので、皆でよく観戦にも行っています(笑)。

山田次長:クリニカルラダーの㈵、㈼にあたる看護師にも報告義務を研修内容に組み込んでいます。また「スタッフマニュアル」は全職員が持ち歩いています。

山田副院長:ダブルチェック、トリプルチェックを行っていても、少しの確認が足らず、思い込みなどでヒューマンエラーとなってしまうことがやはりあります。大学病院は重症度も高く、動きの忙しい中での体制の構築は今後の課題ですね。




今後の展開

山田副院長に今後の展開を伺った。

山田副院長:在院日数の短縮で看護師の1日の業務量は3倍ぐらいになっています。病院は稼働率を上げることが目標ですから、マンパワーを確保し、病棟にさらに配置して、高度医療を提供できるように手厚い看護を実践したいですね。最近の若い看護師は「きついことは嫌」、「我慢もしない」傾向にあるといわれますが、彼女たちがいかに遣り甲斐を持って仕事ができる環境を構築するか、教育をいかに充実させていくのか考えていきたいです。労務環境の整備に関しては、病棟、中央手術室の看護師は完全週休2日制を実現しましたし、来年には院内保育所を設置する予定になっています。




病院概要

名称 兵庫医科大学病院
URL http://www.hyo-med.ac.jp/hospital/
住所 〒663-8501 兵庫県西宮市武庫川町1番1号
電話 0798-45-6543
FAX 0798-48-6261(フリーダイヤル0120-456-199)
病床数 1044床(一般:985床、精神:59床)
診療科目 内科 精神科神経科 小児科 第1外科 第2外科 心臓血管外科 呼吸器外科 整形外科 形成外科 脳神経外科
皮膚科 泌尿器科  産婦人科 眼科 耳鼻咽喉科 放射線科 麻酔科 歯科口腔外科 胸部腫瘍科
開設 1972年4月1日



アクセス補足

●阪神電鉄武庫川駅下車、西出口より徒歩5分。
●阪神電鉄甲子園駅下車、タクシーで約5分
●JR甲子園口駅下車、タクシーで約10分。
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