気を高める看護を

黒岩祐治のプレミアムインタビュー

高階恵美子氏(参議院議員、保健学修士、保健師、看護師)

神奈川県の黒岩祐治知事はかつてジャーナリストとして数々の看護現場を取材し、多くの看護師に会い、問題提起を行ってきました。
今は県知事として看護師を取り巻く様々な課題の解決に向けて取り組んでいます。
このコーナーでは「看護師の味方」である黒岩知事が会いたい、話したい方をお招きして、一緒に看護の問題を考えるプレミアム対談をお送りします。

今回のゲストは看護師出身の高階恵美子参議院議員です。

第9回 気を高める看護を

気を高める看護を

黒岩:在宅医療の現場で働く看護師も増えてきました。今後、ますます重要になってくるでしょうね。ただし、看護師は薬の処方はできません。しかし、食のアドバイスは可能です。東洋医学と西洋医学の融合に関しては前から言ってきましたが、医食同源ということですね。生薬は大体が植物性由来ですし、食には様々な機能があることを看護師が的確に話をしたり、食生活のあり方やメニューの作り方によって状況を改善していけることに対しても、看護師の力が発揮できるはずです。

高階:身体の生理的な機能を整えるには栄養を入れなくてはいけません。東日本大震災のときにも気を配ったのは、被災した方々がとにかく身体が温まって循環が良くなるように、温かいものを食べて、ぐっすり眠れるような環境を整えようということでした。元気なときには気付かずに普通にできていることでも、急に何かを失ったり具合が悪い時には、当たり前の暮らしが難しくなることがあります。周囲の誰かに言われてはじめて、食べていない・眠っていない・便が出ていないといったことに気が付くこともありますね。看護の仕事は病気になった後だけではなく、病気になる前から大事な関わりをしています。もし仮に、ベッドサイドに何らかの必要物品を持って行き、何かしらの看護行為をしなければならないと錯覚しがちな方がおられたら、そうではないのだと、周囲の看護職どうしで支えあって軌道修正しなくてはいけないですね。在宅医療では生活を支えることが大事で、生活リズムを整えるためのお世話をしていかなくてはいけません。現状では保険点数が付きにくいところではありますが(笑)。

黒岩:東洋医学的なところでは看護が入りやすいですね。「気、血、水のバランスを取ることが大事だ」というのが漢方の教えですが、このうち「気」を高める発想は医師にはあまりありません。しかし、気を高めるのは生活実感として分かることです。私の父は肝臓がんでしたが、漢方で劇的に回復していきました。食のあり方を見直し、食べられるような身体にしていったんです。自宅で看取ろうと思い、自宅に連れて帰ったのですが、自宅で食べたいものを食べられるようになったんですね。父の例は極端でしたが、気の高まりによって、病気を抑えることができるのではないでしょうか。病気にも「気」という字が入っていますしね。

高階:「気」の「病」と書いて、病気ですものね。

黒岩:気を高めるのは看護師の仕事です。病院内だけではなく、「どこでもナース」ですよ(笑)。看護とは何かという問いに対し、気を高めるのも仕事の一つではないでしょうか。どういう言葉遣いで、どういう表現をし、どういう雰囲気の中で言葉を伝えていくのか、その言葉一つで気を高めていくことができます。

高階:看護職は仲間に厳しいですね。相対する方に対しては誠心誠意、真心込めてお努めしようと思うのですが、スタッフ同士は常に厳しく切磋琢磨し合っています。自分にも厳しいゆえに、仲間にもつい厳しくなってしまいがちなのですね。離職や働き続けられないと思ってしまう理由の一つに、職場内の人間関係があげられています。職員一人ひとりが、職場で支えてもらえていないように感じ、やがて離職へと追い込まれてしまうという風土ができてしまっているようであれば、メンター制度ももう少し循環的な関わりを持って、落ち込みそうになった同僚の気を高めたり、やる気を引き出す関わりのできる職員を配置することも考えないといけないでしょうね。

黒岩:マネージメントということですね。看護師だけでなく、職員それぞれのやる気を引き出し、皆の力を上向きに統合するのはマネージメントです。そういう意味での教育の場はあるのでしょうか。管理職になっていくにつれて、マネージメント能力も磨かないといけません。

看護師の処遇改善を

高階:看護職は磨きすぎではないですか(笑)。皆、勉強熱心ですし、お休みの日にも研修に行っています。各医療機関の中でも病棟ごとで分野別にきっちり研修しています。その意味で休めないんですね。専門職としての自己研さんなので、必ずしも研修経費が支給されるわけではありませんし、自費で研修を積んだからといって、特別手当てがついたりポジションが上がるわけでもありません。看護職って、肩書きのない人が多すぎるんです。何年経っても、師長にならない限り、肩書きはありません。普通の職場だと、何年経ったら係長クラスとか、部長クラスとか、ポジションアップの道がありますよね。医療職三表に沿った評価だけでなく、経験や技術の高さを評価していくことを考えないといけません。

黒岩:その改善は難しいですか。

高階:今までの慣習が当たり前になっているんです。病棟では師長は一人です。

黒岩:主任さんもいるでしょう。

高階:主任ですと、給料表上は変わらないんです。

黒岩:給料表上はヒラなんですね。

高階:一生懸命、勉強をして経験年数を重ねても、30歳を過ぎたところで、夜勤手当を除いた給与の額は、他の職種に追い越されます。最初は理学療法士、次に臨床検査技師、それから栄養士と、お給料は次々に追い越されていきます。これからは看護職自身がこの現実と向き合い、雇ってもらっているから・自分が決めるわけではないからと尻込みするのではなく、昇給や昇格の仕組みを自ら冷静に考えるようにならなければと思っています。そうでないと、辞めていく人たちを止められません。

黒岩:最近、病院の副院長の一人が看護師であるケースも増えてきましたね。そういう人たちであれば、自分の病院の中でシステムを変えていくのは難しいことではないでしょう。一つ一つの病院で済む話ではありませんか。

高階:そうです。例えば認定看護師は、自在に病院内を動けますので、その時点で、その分野の師長になることも自由裁量でできるはずです。働いていて楽しいとか、頑張った甲斐があったとか、辛いけど、もう少し頑張ってみようと思えるような光るものを現場で見出してあげることが必要ですね。それぞれの職場でできそうな改善策を提案することは価値のあることですし、現場の方々とお互いのアイディアを巡らしながら実際に新たな提案をするという活動もしていきたいですね。知事からも現場で頑張っている看護師にメッセージをいただけますか。

黒岩:看護師の役割は大事です。患者さんの気を高める重要な仕事なのです。医師は気を高めることで病気を治そうという発想をなかなか思い付かないのですが、私はそういう看護師が増えればいいなと思っています。これから、ますます進展する高齢社会をより明るく、楽しくするのは看護師であり、さらに重要な仕事になってくるでしょう。頑張ってください。



黒岩知事プロフィール

昭和55年 3月 早稲田大学政経学部卒業
昭和55年 4月 (株)フジテレビジョン入社
平成21年 9月 同退社
平成21年10月 国際医療福祉大学大学院教授
平成23年 3月 同退職
平成23年 4月 神奈川県知事に就任

フジテレビジョンでは3年間の営業部勤務を経て報道記者となり、政治部、社会部、さらに番組ディレクターを経て、昭和63年から「FNNスーパータイム」キャスターに就任する。その後、日曜朝の「報道2001」キャスターを5年間、務めた後、平成9年4月よりワシントンに駐在する。
平成11年から再び「(新)報道2001」キャスターに復帰する。自ら企画、取材、編集まで手がけた救急医療キャンペーン(平成元年~平成3年)が救急救命士誕生に結びつき、第16回放送文化基金賞、平成2年度民間放送連盟賞を受賞する。
その他、人気ドキュメンタリーシリーズの「感動の看護婦最前線」、「奇跡の生還者」のプロデュースキャスターを務める。「感動の看護婦最前線」も平成5年度と14年度の2度にわたって民間放送連盟賞を受賞する。さらに、日野原重明氏原案のミュージカル「葉っぱのフレディ」のプロデュースも手がける。
平成21年9月、キャスター生活21年半、「(新)報道2001」15年あまりの歴史に幕を閉じ、フジテレビジョンを退社する。国際医療福祉大学大学院教授に転身するが、神奈川県知事選立候補のため、辞職する。
平成23年4月23日に正式に神奈川県知事に就任し、「いのち輝くマグネット神奈川」の実現に向けて全力で取り組んでいる。

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