第48回 黒岩裕治の頼むぞ!ナース

黒岩祐治の頼むぞ!ナース

黒岩祐治
ジャーナリスト。国際医療福祉大学大学院教授。早稲田大学大学院公共経営研究科講師。医療福祉総合研究所(スカパー・医療福祉チャンネル774)副社長 <プロフィール>

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▼バックナンバー #1〜#49

 



 

第48回 自衛隊医療はなんのため?

 先日の「新報道2001」の「黒岩の手帳」のコーナーで私が話した内容について、多くの視聴者からそれは間違いだとお叱りの電話をいただきました。「黒岩は自衛隊病院は一般市民に全く開放されていないなんて言っていたが、うちの近くの自衛隊病院で私自身は診てもらっている。デタラメを言うな。訂正をしろ」というものが多かったようです。

 視聴者のご意見は貴重で、私たちはそれを真摯に受け止めなければならないと思っています。しかし、今回のご批判は誤解に基づくものでした。私は「全国に自衛隊病院は17ありますが、そのほとんどは一般市民に開放されていないんです」と言ったのであって、「全く開放されていない」なんて言っていません。私の話し方が不明瞭で、聞き間違いをさせてしまったのかもしれません。その点については反省しなければなりませんが、事実と異なるという指摘はあたりません。

 この問題をなぜ、今頃、私が取り上げたかというと、それは防衛省の中の看護教育をめぐる動きに重大な異変が生じていたことがきっかけでした。私が話した内容は以下のようなものでした。

「防衛医大・付属病院の独立行政法人化見送りという昨年12月の小さな記事。一見、よく分からないでしょうが、その奥にある問題を考えてみたいと思います。
 自衛隊って見方を変えれば実は医療専門集団でもあるんですね。独自に養成した医師や看護師がいて、自衛隊病院も全国に17あるんですが、このほとんどは一般市民に開放されていないんです。それは独立法人化の問題もそうなんですが、そもそも自衛隊医療はなんのためにあるのかがはっきりしていないからなんですね。有事に備えて待っているということなんでしょうか。
 しかし、今の日本の医療は有事ではないでしょうか?医療崩壊の危機、救急医療も崩壊寸前、私は自衛隊医療は国民の財産なんですから、もっとこの医療の有事に対してもっと活用すべきと考えるんですが、いかがでしょうか」

 わずか50秒のコメントでしたから、看護教育との関係まで話ができませんでした。看護教育の話は複雑であって、どんなに工夫してもこの時間の中では消化しきれなかったので、あえて割愛し、問題の本質だけをお話しした次第でした。テレビで話せませんでしたから、この欄でご紹介してみたいと思います。

 平成17年、「自衛隊における看護師養成の在り方に関する懇談会」が開かれ、私もメンバーとして参加していました。自衛隊の中にも看護専門学校がありますが、この養成コースを3年過程から4年過程に変えたい、そのために有識者の意見を聞いて、方針をまとめようというものでした。私はキャスターという性格上、通常は政府のこういった検討会のメンバーになることはありませんが、この問題は私の専門領域のテーマでしたから、特例として参加することにしました。

 翌年、その懇談会の報告書がまとまり、看護師養成は4年過程に移行することが決まりました。ここまでは役所のシナリオ通りに行ったのですが、私をメンバーに入れていたことによって、事務局は一時、大混乱に陥ることになりました。私は「看護養成を4年過程にすることは議論するまでもない。それは今や看護界の大きな流れなのだから」と全面的な賛成を表明しましたが、同時に、次のような指摘を行なったのです。
「看護界の大きな流れと言えば、准看護師養成を廃止するというのも同様。特に厚生省の検討会で21世紀の初頭に看護師養成一本化の方針は明確に出されているわけだから、自衛隊の准看護師養成課程も廃止し、4年過程にすべき」と主張したのです。

 自衛隊は以前より衛生科隊用に准看護師養成過程を持っていました。防衛庁としてはまさかその問題にまで飛び火するとは想定しておらず、私をなだめようと必死になりましたが、私が最後まで絶対に譲らなかったために、やむなく、准看護師養成過程を廃止し、4年生に向けて作業を進めることも最終報告書に明記してくれました。

 この方針に基づいて、防衛省内部では着々と、準備が進められました。その後、防衛医大とその付属病院が独立法人化されることになったことから、大学の看護学科として4年過程を作ることになりました。すべては順調に進んでいました。ところが、昨年12月、自民党の国防部会で防衛医大・付属病院の独立行政法人化に待ったがかけられたのです。このことから、すべて積み上げてきた議論は宙に浮いてしまうこととなってしまいました。

 なぜに独立法人化に待ったがかかったかと言えば、自衛隊の医療・病院に民間的経営手法を入れることに対して自民党国防族の抵抗があったようです。自衛隊はいわゆる軍医を養成し、有事に備えているのであるから、国がすべての責任を持って管理しなければならないということです。しかし、有事に備えて待っていろと言われても、現場の医師たちは臨床経験をもっと積みたいのに、一般市民への開放が遅れているから、多くの患者を診ることができないというジレンマに陥っているのです。結局、こういった現場の声は無視され、看護師養成課程も含めすべての問題は先送りされてしまいました。

要するに、独立法人化の問題にしろ、自衛隊病院の一般開放のしろ、看護師養成過程の問題にせよ、つまるところ、そもそも自衛隊の医療はなんのためにあるのかの共通理解が生まれていないところが根本の問題ではないのかというのが私の問題意識だったのです。 実は、懇談会の最初の会合で、発言を求められた私は、同じ趣旨のことを話していたことを関係者から指摘され、自分でも驚きました。

これを50秒で語ることはやっぱり無理ですよね。





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