第61回 黒岩裕治の頼むぞ!ナース

黒岩祐治の頼むぞ!ナース

黒岩祐治
ジャーナリスト。国際医療福祉大学大学院教授。早稲田大学大学院公共経営研究科講師。医療福祉総合研究所(スカパー・医療福祉チャンネル774)副社長 <プロフィール>

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▼バックナンバー #1〜#49

 



 

第61回 日本看護連盟は、看護界に理解ある看護系議員を育てるべき

 7月の参議院選挙で民主党が思わぬ大敗をしたことから、民主党内は大荒れとなっています。そんな中で日本看護連盟候補のたかがい恵美子さんが見事、当選を果たしたことは画期的なことでした。連盟候補になったのはよかったものの、自民党からの立候補になったことから、日本看護協会が支持しないという異例の事態になり、私もずいぶん心配していただけにホッとしているところです。

 日本医師連盟が推した民主党新人・安藤高夫氏、自民党現職・西島英利氏、みんなの党の清水鴻一郎氏ら3人は全員落選でした。3候補の得票を合計しても、3年前の武見敬三氏の票に1万6,000票も及ばなかったというのですから、医師連盟にとって事態は深刻です。1974年以来、堅持してきた日本医師会の組織内候補はいなくなり、今後、日本医師会の発言力が低下していくことは避けられないと見られています。

 それに比べ、約21万票を獲得したたかがいさんは、平成19年(2007年)参院選で落選した松原まなみ氏の16万7,000票よりも、野党・自民党でありながら、4万3,000票も上積みをしたのですから、たいしたものです。

 私も公示日前にはいくつかの県の看護連盟に呼ばれ、講演をしました。主催者からはなんとかたかがいさんのことを持ちあげて欲しいと懇願されました。どの会場にもある種の緊張感がみなぎっていました。前回は、連盟と協会が一体となっても当選させられなかったのに、今回は分裂選挙になってしまったのですから、危機感が走って当然です。

 しかも、政局の風はオセロゲームのようにコロコロと変わりました。連盟がたかがいさんを自民党から出すことに決めた時点では、民主党に圧倒的な勢いがありました。私自身、世の中は民主党の時代に代わったのに、いつまでも自民党にこだわっているのはいかがなものかと正直思っていました。

 ところが、鳩山政権の人気は予想外に早く低下し始めました。それでも自民党の支持はそれほど増えず、モタモタしていました。それどころか、本来は自民党にチャンスが訪れようとしている時に、舛添氏や与謝野氏らが相次いで離党し、やはり自民党は救いようのない状態になっているのかと思わざるをえませんでした。

 鳩山総理が辞任に追い込まれた瞬間に、流れはまた一気に変わりました。民主党の支持率がV字回復をしたのでした。これで自民党は万事休す。たかがいさんも圏外に放り出されてしまっただろうと私は思いました。ところが、菅総理の唐突感のあった消費税発言が再び流れを変え、日を追うごとに民主党の支持率は再び急降下、自民党が“敵失”により、息を吹き返したのでした。

 選挙の候補者になるというのは、こういう状況に一喜一憂しなければいけないわけですからたいへんです。ただ、たかがいさんが勝利することができたのは決して自民党に有利な展開になったからだけではありません。なぜに勝てたのか、それはしっかりと総括しておく必要があると思います。

 私は以前にこの欄でも書きましたが、日本看護連盟が組織候補を国会に送り出すというのはもう止めた方がいいと改めて思っています。たかがいさんは厳密な意味では従来型の組織候補ではありませんでした。彼女には看護界を超える支持の拡がりがあったということを忘れてはなりません。

 選挙が終わって、たかがいさんとじっくり話す機会がありました。全都道府県を3回ずつ回ったそうです。もちろん各地の看護連盟がおぜん立てをしたことは間違いありませんが、選挙区によっては自民党の支部がかなり活発に動いたというのです。政権交代によって野党に転落してしまった直後の自民党からしてみれば、みんなが民主党になびく中で、これまでと変わらず自民党に操を立ててくれた看護連盟は特別の存在に見えたことでしょう。

 そんな連盟の代表候補のたかがいさんを落とすということは自民党にとって、最も避けなければならないシナリオでした。私も折に触れ、自民党幹部にはそうたきつけていました。自民党の中でも、最重点候補の一人という位置付けがなされていました。全国区の比例代表というのは、対象が全国ですから、闘い方も容易ではありません。だからこそ、各党は知名度に頼って、有名人の擁立に走ったり、組織候補に頼ろうとするのです。

 しかし、たかがいさんの拠って立つべき組織は現実問題として分裂状態ですから、組織に頼るだけではとても当選など狙えません。そこで、自民党の一部の大物たちが自分自身の支援者や組織を動員して、彼女を支えたのです。たかがいさんが従来型の組織候補ではなかったというのはそういう意味です。

 たかがいさんの強みは、業界用語で言えば、“タマがよかった”ということです。私が彼女に繰り返し言っていたことは、看護界の代表という狭い意識ではなく、国民医療を守る代表という立場を強調すべきということでした。看護界の代表はあくまで看護界のために働くと見られますから、一般国民にとっては関係ない存在です。そうではなくて、たまたま看護の専門家ではあるけれども、看護界のためではなく、国民医療のために働く、つまり患者を守る代表として働くというアピールが大事だと思ったのです。

 そういう戦略に立ってみた時に、彼女の“タマの良さ”が大きなチカラになったことは間違いありません。つまり業界の中だけで受けるタイプではなく、見栄えもいいし、明るいし、押し出しも悪くない、一般受けするタイプだったからです。「このベッピンさんをよろしく」と私に頼んだのは、皮肉にも最終的には推薦しないことを決めた看護協会の久常会長でした。

 私はその言葉を忠実に守り、陰に陽に彼女にはなんとしても当選してもらいたいと願って、働きかけてきたつもりです。ですから、彼女がこの厳しい選挙戦を勝ち抜いて、国会議員としての活動を始められるようになったことを心から喜んでいるところです。

 ただ、言ってみればたかがいさんのタマに救われたということは、看護連盟もしっかりと総括をしておくべきだと思います。時代が組織候補の時代ではないというのは、日本医師連盟のていたらくを見れば明らかです。私が以前から言っているように、自分たちの組織候補を国会に送り出すのではなく、看護界に理解ある看護系議員を一つ一つの選挙区で、当選させ育てていくことがよほど重大なことです。労多くして実り少なし、それが組織候補です。これからは脱・組織候補で政治力を高めるべきです。たかがいさんの経験をそういう風に活かしていって欲しいと願わずにはおれません。

 ところで、たかがいさんと言えば、前にこの欄でも書きましたが、看護協会の機関誌「アンフィニ」での対談の席上、ミュージカル「葉っぱのフレディ」のニューヨーク公演を念願していた日野原先生をその気にさせてしまって、大騒動になったということはご記憶にあるでしょう。実は資金的な問題から絶対に不可能と思われていた公演でしたが、責任を感じたたかがいさんの努力と、それを受けて募金に参加して下さった全国の看護連盟、協会の方々のご支援によって、なんとか資金も集まり、8月13日~15日、NY公演が実現したのでした。

 ミュージカルの本場のニューヨークで果たして通用するかと心配もありましたが、観客全員のスタンディングオベーションに包まれ、言葉にならない感動を覚えることができました。日野原先生もこの世で極楽を見たような喜びようで、想像以上の大成功を収めることができました。

 研修会や講演会の場で、募金に協力して下さったみなさんに心からお礼を申し上げたいと思います。たかがいさんも当選し、日野原先生の夢も実現し、結果がすべてうまくいきました。今年の暑い夏は私たちにとってはとっても熱い夏もありました。(完)





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